この先、渋谷区はどう変わるの? 「教えて!この街の未来」
2022.10.5
渋谷区基本構想を改定した2016年から、「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」 を合言葉にまちづくりに動き出している渋谷区。区制施行90周年を迎え、よりよい区民生活の実現に向けてこの先どのような未来予想図が描かれているのか。区民を代表する中学生たちからの質問に、まちづくりに関わるプロが答える。
【区政について】教えて!この街の未来。 “街を良くするために、渋谷区が大事にしていることは?”
- 質問者
- 渋谷区立中学校1年生/小池走琉さん
それはね
「個性と調和を大切に、シティプライドを高めていくことです」
渋谷区には、この街に住んでいて良かった、また住みたいと思っている人たちの意識の高さ=シティプライドがあります。これはすばらしい財産であり、アドバンテージだと思います。自分の街だからきれいにしたい、街に貢献したいという思いは原動力になりますし、シティプライドを高めていくことがいい街になっていくための1つのバロメーターだと思っています。「ちがいを ちからに」という合言葉を聞いて一人ひとりが感じることを、それぞれが行動に移してくれたらいいですよね。個性を尊重する、発揮することはすごく重要です。けれどもっと大切なのは、街と街、自分と人の違うところを認識したうえで調和をしていくこと。 調和=ハーモニーを奏で、奏でられたハーモニーが力を持っていくのだと思います。
テクノロジーを活用した最先端の田舎暮らし構想、リーガル・ウォールや学校の建て替えプロジェクトなど、面白い仕掛けをどんどん実現していく予定です。 今はまだその道半ばですが、みなさんと一緒に“未来の渋谷区”を作っていけたらよいなと思っています。
お話を伺いました

長谷部 健さんKen Hasebe
渋谷区長
はせべ・けん/1972年渋谷区 生まれ。株式会社博報堂を退社後、 NPO 法人を設立。原宿・表参道を皮切りに清掃活動、 ポイ捨て問題に取り組む。2003 年渋谷区議に初当選。2015年より現職。
【都市開発について】教えて!この街の未来。 “渋谷駅前の開発はこれからどんな発展を遂げますか?”
- 質問者
- 渋谷区立中学校1年生/小川樂さん
それはね
「アーバン・コアがつなぐ、まったく新しい街が現れます!」
渋谷駅中心地区の再開発では、アーバン・コアという概念を取り入れています。
一般的に超高層の建物は、人が移動するコア(エレベーターやエスカレーターなど)の部分を内側に抱え込んでしまい、人の流れが地上から見えなくなってしまいます。そこで駅周辺の再開発は、建物を介して街に人々が出やすくなることを一番に考えて、できるだけ建物の前面にコアを出して人々の流れが見えるようにすることを一つのルールにしました。
将来的には、銀座線の屋上に歩行者デッキが通り、宮益坂から道玄坂までつながるスカイウェイも完成。ハチ公前広場もガラリと変わります。
新しい渋谷の街並みに、世界中が驚くことでしょう。
お話を伺いました

内藤 廣さんHiroshi Naito
建築家
ないとう・ひろし/1981年に内藤 廣建築設計事務所設立。鳥羽市立海の博物館、高田松原津波復興祈念公園国営追悼・記念施設、銀座線渋谷駅など多くの公共建築や文化施設を手掛ける。
【都市開発について】教えて!この街の未来。 “新しくできる渋谷区の公共施設には、どんな工夫があるの?”
- 質問者
- 渋谷区立中学校2年生 中川莉々子さん
それはね
「大きな穴が開いていて、ビルが観客席のような不思議な建物ができる」
渋谷本町学園の老朽化した第二グラウンド施設を建替えて、地域の防災拠点となり、子どもから高齢者まで幅広い世代が利用しやすい機能を備えた複合施設を現在建設中です。私はこの建物の設計を手掛けていますが、公共施設として単なる建物のデザインをするのではなく、一つの集落を作るような感覚で取り組んでいます。
人々の暮らしに根付いた建物があり、お祭りなども開催されて街の人が集まる広場がある。イメージしたのは、そんなふうに人々の日常と非日常がリンクするような場所です。渋谷本町学園第二グラウンドは、スポーツ観戦を意識して建物そのものが観客席のような役割も果たすような面白い仕掛けも考えています。
渋谷らしい遊び心あふれる公共施設になる予定ですので、 楽しみにしていてください。
お話を伺いました

隈 研吾さんKengo Kuma
建築家
くま・けんご/渋谷スクランブルスクエアの設計のほか、千駄ヶ谷区民複合施設や鍋島松濤公園のトイレ〈森のコミチ〉など渋谷区の公共施設の設計も数多く手掛ける。
【教育について】教えて!この街の未来。 “タブレットや学習環境、渋谷区の学校はこれからどう進化するの?”
- 質問者
- 渋谷区立中学校1年生/小川樂さん
それはね
「みなさんが主体的、創造的に学べるように、『未来の学校』づくりを進めていきます」
全国に先駆けて、2017年より、渋谷区立の小中学校に通う子どもたちのために1人1台のタブレット端末を導入しました。タブレット端末をさらに活用し、先生から一斉に正解を教わる受け身の学びではなく、自分から取り組む主体的で創造的な学びを進めていきます。
また、老朽化した学校の建て替えに合わせ て、新しい学校施設「未来の学校」づくりを進めています。オンラインで外の世界とも容易につながる教室や、一人でじっくり課題に取り組んだり、仲間と協働学習ができたり、いろいろな活動に柔軟に対応する学習環境を創りま
す。
区HPの「未来の学校」の動画もぜひ観てください。
お話を伺いました

五十嵐 俊子さんToshiko Igarashi
渋谷区教育長
いがらし・としこ/202 1年度より現職。理科教育、ICT教育、防災教育など に多く携わる。これまでの経験を生かし、「新しい学校づくり」を目指す渋谷区の教育の充実と発展に努める。
【教育について】教えて!この街の未来。 “渋谷ユナイテッドは、部活にどんな革命を起こしてくれますか”
- 質問者
- 渋谷区立中学校2年生 中川莉々子さん
それはね
「学校の枠を超えた、渋谷ユナイテッドクラブを目指しています」
渋谷部活動改革を推進するため、2021年に一般社団法人渋谷ユナイテッドが設立されました。「やりたい部活が学校にない」、「人数が足りなくて試合に出られない」、「きちんと教えてくれる指導者がいない」。そんな部活動にまつわるみなさんの悩みを解決するための組織です。
渋谷ユナイテッドが提案する新しい部活動では、チームを地域化し学校の枠を超えて生徒が集まり、専門分野の指導を受けることができます。さらに今後は、中学生に限らず、渋谷区民の誰もがスポーツや文化活動を楽しく〝する〞、〝見る〞、〝支える〞とそれぞれの方法
で体験できる〝渋谷区民がつなが
るクラブ活動〞を目指しています。
お話を伺いました

田丸 尚稔さんNaotoshi Tamaru
一般社団法人 渋谷ユナイテッド理事
たまる・なおとし/フロリダ州立大学教育学部にてスポーツマネジメント修士課程を修了。米スポーツ教育 機関、IMGアカデミーのアジア地区代表を経て帰国し、現職。
【福祉について】教えて!この街の未来 “地域のお年寄りと一緒にデジタルを楽しむには?”
- 質問者
- 渋谷区立中学校1年生 小池走琉さん
それはね
「お年寄りのペースに寄り添って、優しく教えてあげてほしいな」
この度、縁がありまして「渋 谷区シニアデジタルデビュー大使」という大変な任務を拝命いたしました。自分自身を育ててくれた渋谷区に少しでも恩返しができればという思いで、僕なりの目線でこの街の魅力を紹介できたらと、手始めにツイッターを始めました。
そして、デジタル大使になったおかげで出会えた、同世代の渋谷区民の方たちと新たな交流もありました。「私も一緒に始めてみたい」、「スマホのおかげで、孫との会話が増えました」なんて話を聞かせてもらった時は、僕までうれしくなっちゃいました。決して無理をすることはないと思います。自分なりのやり方でデジタル機器と付き合ってみてください。頑張らなくちゃ、の前に、まずは一緒に楽しみましょう。デジタルを使うと脳みその活性化にも(笑)。そう、地域のお年寄りに伝えてください。
お話を伺いました

井上 順さんJun Inoue
渋谷区シニアデジタルデビュー大使
いのうえ・じゅん/1947年渋谷区生まれ。グループ・サウンズ「ザ・スパイダース」のツインボーカルとしてデビュー。その後、役者、エンタテイナーとして幅広く活躍。2020年に渋谷区名誉区民を顕彰。
【福祉について】教えて!この街の未来。 “僕たちもシブヤフォントに参加できますか?”
- 質問者
- 渋谷区立中学校1年生/戸田丹瑚さん
それはね
「誰もが参加できる共創プロジェクトを目指しています」
私たちは、「誰もが主人公に なれる街、シブヤ」を目指して活動しています。
シブヤフォントは、渋谷で暮らし、働く障がいのある人の描いた文字や絵を、デザイン専門学校の学生が、共創しながら、一つ一つ、作者と作品の個性を活かしたフォントやパターンにデザインした渋谷区公認のパブリックデータです。
多くの人に渋谷を好きになってほしい、シティプライドを感じてほしい、そして障がいのある人の活動を地域の人たちにもっと知ってほしいという願いを託して、さまざまなモノやコトに活 用しています 。
シブヤフォントのデータは、ホームページからダウンロード可能で、企業も個人も、誰でも使用できるので、ぜひご活用ください。
お話を伺いました

ライラ・カセムさんLaila Cassim
一般社団法人シブヤフォント、 アートディレクター
デザイナー、東京大学「共生のた めの国際哲学研究センター」上廣共生哲学講座特任研究員。専門性を活かしアートや協働制作を中心としたプロジェクトを運営。
【スマートシティ推進について】教えて!この街の未来。 “街のデジタル化や、スマート化って、必要なことなんですか?”
- 質問者
- 渋谷区立中学校1年生/小池走琉さん
それはね
「どちらも区民一人ひとりの幸福感を高める“手段”だと考えてください」
スマート化は、デジタル技術やデータを活用して、都市全体の効率化・高度化を図ることで渋谷区の持つ「多様性」の力を最大限に高めていく手段です。それぞれの地域性や文化的背景に応じた、その街ならではのスマート化が求められていると思います。
渋谷区には、ファッション、カルチャー、アート、スポーツ、エンターテイメント、ITなどクリエイティブな創造、人を集わせる場の力が備わっており、区民のシビックプライドも高い。そういう街だからこそ世界中から人々が集まり、地域や人が交流することで、さらなるイノベーションが生まれます。
そこにデジタル技術が加われば、創造都市としてますます進化していくと思いませんか? 渋谷型のスマート化には、たくさんの可能性が広がっていると思います。
お話を伺いました

南雲 岳彦さんTakehiko Nagumo
一般社団法人スマートシティ・ インスティテュート専務理事
なぐも・たけひこ/三菱UFJリサーチ&コンサルティング専務執行役員。地球環境と市民が共存し、誰もが幸福になれるグリーン&デジタルな社会づくりに従事。国内外の大学で客員教授も兼務。
【スマートシティ推進について】教えて!この街の未来。 “勉強したり遊んだり、子供が自由に使える場は増えるの?“
- 質問者
- 渋谷区立中学校1年生 山岸暖央さん
それはね
「子ども第三の居場所 『みらいの図書室』がありますよ!」
渋谷区では、「渋谷未来デザイン」というオープン型のイノベーションプラットフォームを通して、企業、区、大学、区民も参加した産官学民連携で共創型のまちづくりに取り組んでいます。
最近は、子どもたちのための居場所づくりにも積極的です。「みらいの図書室」は学校でも家でもない、子どもたちが安心して過ごせる第三の居場所。さまざまな環境の子どもたちが集まり、放課後の宿題サポートやデジタルツールを活用したクリエイティブプログラム、SDGs視点の実験や学習などが体験できます。
ほかにも、妊娠、出産から就学までさまざまな子育ての悩みをサポートしてくれる「渋谷区子育てネウボラ」や、渋谷区全体をプレイグラウンドと捉えて、渋谷のさまざまな場所でスポーツを体験できるような事業も構想中です。
お話を伺いました

小泉 秀樹さんHideki Koizumi
一般社団法人 渋谷未来デザイン 代表理事
こいずみ・ひでき/東京大学大学院工学 系研究科都市工学専攻教授。専門は都市計画、コミュニティデザイン、共創まちづくり。著書に『コミュニティ・デザイン学』(編著、東京大学出版会)など。
【スポーツについて】教えて!この街の未来。 “パラスポーツをもっと応援するために、僕らにできることは?”
- 質問者
- 渋谷区立中学校1年生 小川樂さん
それはね
「子どもたちの純真さからすでに多くの勇気と学びをもらっています」
1964年の東京大会が、渋谷区にとって施設や街の整備などのハード面におけるまちづくりを活性化したとしたら、今回の東京2020パラリンピックは、人々の心や考え方に支えられ、ソフト面をアップデートしたと思います。
中でも私が目を見張ったのは、子どもたちの姿です。パラバドミントンを観戦した子どもたちは、選手たちがプレイする姿を見て、純粋にかっこいい!という感情をストレートに表現していました。彼らには、大人がとらわれがちなステレオタイプがないのだと気づかされたんです。子どもから大人に伝播していく「リ バースエデュケーション」がパラスポーツを通してすでに実践されていると感じます。大人も子どもも主体となり、一丸となった感性が、未来の渋谷を作っていくのだと思います。
お話を伺いました

大日方邦子さんKuniko Obanata
日本パラリンピアンズ協会 会長
おびなた・くにこ/3歳のときに交通事故により負傷。高校2年生よりチェアスキーヤーとして歩み始める。渋谷区の教育委員、渋谷未来デザインのフューチャーデザイナーなども務める。
【文化について】教えて!この街の未来。 “お金をかけなくても、文化と触れ合いながら遊べる空間はある?”
- 質問者
- 渋谷区立中学校1年生/戸田丹瑚さん
それはね
「新たな文化発信、西参道プロジェクトに注目してみてください」
千駄ヶ谷には、日本将棋連盟の総本山である東京・将棋会館があり、古くから将棋の街として知られています。また鳩森八 幡神社には「将棋堂」があり、棋 力向上を祈願する棋士たちの聖地とも。
そんな街の特性をまちづくりに活かそうと、日本将棋連盟と渋谷区が協力してさまざまな取り組みが進行しています。その一つが、「にぎわいや文化の交流を 創出するまち」を掲げた西参道プロジェクトです。
西参道高架下を再整備して、将棋文化を発信 し地域の交流の場となるようなホールやギャラリーを有した複合施設やさまざまな活動が行える広場空間を有した公園も誕生します。地域の一員として、 将棋を通したまちづくりの活性化に助力できたらうれしいです。
お話を伺いました

佐藤 康光さんYasumitsu Sato
日本将棋連盟 会長
さとう・やすみつ/将棋棋士。6歳で将棋を覚え、17歳でプロ入り。タイトル通算13期(歴代7位)、永世棋聖の資格保持者。2017 年より現職。将棋文化の発展、普及のために注力している。